スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

夏祭り、帰り道 

盆踊りを思う存分楽しんで、手を振って皆を見送る。
祭りの熱気と喧騒が冷めやらぬままに、体も心もまだ少しふんわりと宙に浮いたまま歩き出す。

「―――乗ってく?」

そう問いかけられ、蜜琉は笑顔でお願いするわと返事をした。
自転車を置いてある場所までカランコロン、と下駄を鳴らしながら歩く。蜜琉の腕には射的で取った景品の黒猫のぬいぐるみが大事そうに抱えられている。
江間を見れば、同じく景品の箱を持ち軽く遊ぶように放り投げては受け止めている。不意に、中身を取り出したかと思えばおもちゃのネックレスを見て何か考えているような顔をする。
江間の手のひらで光るそれは、昔の自分が同じように縁日で手に入れて喜んでいたような、それこそ小学生の女の子が喜ぶような物だ。蜜琉は何故江間がそれを狙ったのか不思議になって笑いながら問いかける。

「・・・綺麗だなと思って!」

きっと嘘ではないだろうけど、本当の事でもないように思える。ふぅん、と微笑む蜜琉に江間が手を出してと言う様な仕草をする。

「なぁに?」

蜜琉がそっと手を差し出すと、ほんの少し強い力で甲を掴まれ手のひらをまるで飴をねだる子どものように上に向けられる。

「あげるっ」

そう言って、手のひらに自分の持っていたペンダントを落として笑う。

―――どうしてその笑顔が、手に入らない何かを我慢する子どものように見えたのだろう?

「・・・えーっと、まァ、捨てていーから!」

「やーねぇ、捨てたりしないわよぅ!」

捨ててもいいという言葉に少し驚いて即答する。ネックレスを見ながらうふふと笑う。

「子どもの時に大事にしてた宝物みたいねぇ!」

それから、手の中のネックレスを取り出したハンカチに大事に包んで巾着の中へしまった。

「宝物、ひとつ増えちゃったわ。ありがとねぇ、良将ちゃん」

嬉しそうに笑う蜜琉を見て、江間が笑う。

――――やっぱり、どこか遠くにいるような笑顔だと蜜琉は思う。ぼんやりと見えるか見えないかの距離があるような、そんな気持ちになるのだ。
踏み込める距離だと思う。なのにどうして踏み込めないのか自分でもわからず、蜜琉は自転車を置いてある場所までの少しの間、黙ったまま小指をそっと繋いで歩いた。

夏の月が綺麗な夜、近くて遠い距離はまるで月の様で。







スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。