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お節介と、お誘いと、熱気球 

こないだ言ってた、珍しいメンバーで遊びに行ってきたーって奴なんだけどねぇ!

あたしとー、茜ちゃんとー、菫ちゃんとー、良将ちゃんで行ってきたのよねー!
熱気球に乗れるって奴だったんだけど、すごかったわよぅ!すっごい高いし、風景綺麗だったのよー。

中々乗れるもんじゃないし、定員五人までだったから行って来たの!

まぁ、最大に珍しかったのは紙袋被ってない菫ちゃんだったかもしれないけどー(笑)
見た事ない訳じゃないけど、滅多に見れないんだものー!!

で、なんでこのメンバーになったかって言うとー・・・。
「こんなとこで何してるの?茜ちゃん」

「ほわえあああっ!?」

不意に掛けられた声に、おもしろいほどに奇声とも取れる悲鳴を上げたのは赤金・茜。
蜜琉が所属する結社、『戦闘楽団デスパレード』の団員であり、大好きな友達の一人だ。
蜜琉は、この四つ年下ではあるが聡明な部分と、年相応の可愛らしい一面を持つ少女がものっすごい挙動不審な動きをしていたので思わず声を掛けたのだが、まさかここまで過剰な反応をするとは思ってもいなかった。

「え、そんなに吃驚させちゃった??ごめんねぇ、茜ちゃん」

「あ、あー、クナギー様でしたかっ!私はあの、ほら、たまたま!偶然!ここを通りかかっただけでしてー」

いまいち会話が噛み合っていない。おかしいわねぇ、と思いながら蜜琉が茜のしどろもどろとした言葉と、視線の先を追う。
・・・はっはーん。蜜琉はにんまりと笑う。

「な、なんですかその笑顔は!ほんとに、偶然通りかかっただけなんですからね!?」

「必死になればなるほど泥沼にはまる」と言う言葉が今の彼女にはピッタリなくらい当てはまる。薄っすらと汗を掻き、目が泳いでいる。

「そーよねぇ、偶然よねー。この先に菫ちゃんの結社が借りてる教室があるとか、すっごい偶然よねー!」

もの凄く輝いた笑顔で蜜琉がスパッと言い放つ。

「な、そ、そうですねっ!す、すごい偶然ですよね、偶然と偶然は重なると申しますし珍しい事ではありませんよね!クナギー様も偶然ここを通りかかったのでしょうし!!では私はこれにてさよならどろんですよー」

ワンブレスで言い切りやがった、しかもスタタタタっと逃げた。

「はーい、まったねぇ!茜ちゃん!」

わかりやすい、としか言いようがなかったがこの少女は明らかに鬼頭・菫に好意を抱いている。誰にも言ったことはないし、言い触らす事もしないけれど、そんな事は一緒の結社に居て様子を見てればわかる事だし、気が付いている者もいるだろう。
・・・当の好意を寄せられている男を除いてだが。

「偶然な訳ないじゃないのよぅー、あたし菫ちゃんとこに用があってここまで来たのに」

くすり、と笑って蜜琉が呟く。蜜琉は、茜がデスパレードで入り口をずっと見ているのを知っていたし、もちろんその訳も理解していた。
気になって、仕方が無くて、わくわくして待っているのだ。今日は会えるだろうか、と。
「これは一肌脱いじゃうべきかしら」

お節介なのはわかっていたが、何かしたくなるのだからしょうがない。思い立ったが吉日とばかりに、蜜琉は踵を返して歩き出した。用事は今度でいいわよねぇ、と呟きながら。

蜜琉の向かった先はとある教室で、生徒に各地で行われるイベントの案内などが豊富にあるのだ。何枚かのチラシを見て、ふと動きを止める。

「ペチュニアが咲いてる公園でお祭り・・・?」

目を引く見出しはありふれたものではあったが、そこに映っていた写真が蜜琉の目を引いた。色とりどりの熱気球の写真、そしてその下には『熱気球搭乗体験』と書いてある。

「定員五名・・・いいじゃない!」

蜜琉の脳内でガチャガチャピーンと音がしそうな勢いで計画が練られていく。
あたしでしょー、茜ちゃんでしょー、菫ちゃんでしょー。で、三人だと多分菫ちゃんが二人で行って来ればいいんじゃないのって言うからもう一人、茜ちゃんも知ってて菫ちゃんも知ってて空気読めそうな人っていうとー・・・そーだ、良将ちゃんにしましょ!
四枚、チラシをもらって教室を出る。茜ちゃんは多分、デスパに行けば会えるわよね、と予想して歩き出した。

案の定と言うべきか、丁度パック豆乳をストローで飲みながらデスパのドアを開ける寸前の茜を見つける。

「あ、茜ちゃーん!」

ちょいちょい、と手を招き猫のように振って呼ぶと、首を傾げながらもドアノブから手を離し近寄ってきた。

「ほえ?何ですかクニャギ様」

「あのねぇ、これ行かない?」

ストローを銜えたままの茜にチラシの一枚を差し出して笑う。

「これのねぇ、ここのー・・・ここよ、ここ!熱気球って楽しそうじゃなぁい?高いところ嫌いだっけ?」

「ふん、ふん、熱気きゅふ。高とこお?好きですよ」

ちらしを受け取って興味深そうに返事をする。

「あ、好き?よかったー、じゃあ行きましょ!!あたしとー、茜ちゃんとー、良将ちゃんとー」

「クナギ様は当然として、私と、良将・・・江間様?あのカフェの爽やかさんですね」

ストローを銜え直してチュルルーと豆乳を飲んでいる茜を見ながら、もう一度言う。

「良将ちゃんとは会った事あるものねー?そうそう、それから 菫ちゃん!!」

「ありますよ、カフェで。そして菫様」

チュルチュルと豆乳を飲んでいた茜の動きが一瞬止まった、と思った瞬間。

「!?!?!?!?!?!!!!!???!!!?!?」

巫女服姿の少女が咽た、それはもうすごい勢いで。

「げは、ゴホッ・・・ケホケホ・・・ッ」

「大丈夫ー?茜ちゃん」

背中を軽く摩ってやりながら顔を覗き込む。

「は、大丈夫、ですが、す、す、菫様ですかっ!?」

思いっきり声が裏返っている。ちょっとおもしろいなーとか思いながら、そうよー、それがどうかしたの?と返事をする。

「ああいえ!何でもないです。何でもないですよおかしな事なんて何もないのですただちょっとあの方が気球に乗っている姿を想像したら絵になるようなシュールなような微妙な線だなあと思って好奇心が疼いただけなのですそれだけなのですそれだけですってば!!」

ふーん、とにんまり笑う。

「何ですかその笑顔はーーー!!!」

「ううんー、なんでもないのよぅー?茜ちゃんったら可愛いなーなんて思ってないわよぅー?でー、行く?茜ちゃんが行くなら今から全力で誘いに行こうかなーって思ってるんだけどねぇ?」

息も絶え絶えにこっちを見ている茜に悪戯っ子の様に軽くウィンクを向けて笑う。

「・・・・・・え、あの・・・いや・・・・・・その・・・行きます・・・」

「じゃあ、決定ねぇ!楽しみねー!!」

蚊の鳴くような声で返事をする茜に対照的なまでの明るい声でにっこりと笑う。
後は良将と菫を誘うだけだ。まだ少し顔を赤くしたままの茜に、当日は可愛い格好でね?と念を押しながら別れを告げて歩き出す。

菫ちゃんは今日会えなかったら明日でもいいとしてー、良将ちゃんはカフェで会えるだろうし・・・。
そう考えながらキャンパスの校門を抜けて歩き出す。夕方とはいえまだ暑く、ハンドタオルで汗を拭いながらカフェへと向かうその途中。
長身の男を目の端に捉える。すらっとした手足、少し細身ではあるが目を引く容姿だ。・・・ただひとつ、紙袋を頭から被っている点を除けば。というか紙袋が目を引くと言うべきなのか。

「すっみれちゃーーーーん!!!」

迷わず大声で叫んで駆け寄る。菫ちゃん、と呼ばれた彼こそが鬼頭・菫。奇異な服装を好む学園の中でも、紙袋を被っている事で目を引く蜜琉の友達だ。茜と同じく、デスパレードの結社員でもある。

「あぁ、玖凪クンか、誰かと思ったよっ!」

「ねーねー菫ちゃん、今度一緒に遊びにいかなーい??」

「ん?どっか行くの?GT?」

軽く首を傾げながら蜜琉に問う。

「今回はGTじゃないのよー!これよこれ、おもしろそうじゃなぁい?」

蜜琉に渡されたチラシを受け取り、指差された場所を見る。

「熱気球・・・?」

「そうそう!菫ちゃん高い所好きよねぇ?嫌い・・・じゃなかったわよねー?」

「うん?ああ、高い所は好きだよっ!それにしても気球ってまた珍しいねぇ」

少し、興味を引かれたのかチラシに目を走らせている菫に蜜琉が畳み掛けるように言い放つ。

「でっしょー?中々こんなの乗る機会なんでないしねぇ!でね、他にも一緒に行くのがー、良将ちゃんでしょー」

「まぁ確かにねっ!でも、別に菫ちゃんを誘わなくても江間クンが行くなら二人で行ってくれば・・・」

「うふふ、大丈夫よー!茜ちゃんも一緒に行くから!って訳で菫ちゃんも行くわよね!ねー?」

「赤金クンも?ほんとに珍しいメンバーというか、いや参加はいいんだけどね!」

「じゃあ決まりねぇ!!当日が楽しみよねぇ」

鬼頭は何が「大丈夫」で「じゃあ決まり」なのかさっぱりわからなかったが、断る必要も特になかったし、高い所が好きなのは事実だったのでそのまま頷いた。

「当日は紙袋被ってきちゃだめよぅ?」

「あはっ、さすがに脱いで行くから大丈夫だよ!了解、じゃあ当日にねぇ?」

なし崩しに約束を取り付けて、手を振って別れてカフェへと足を向け始める。これで計画の80%は上手くいったようなものだ。

「後はー、良将ちゃんを誘ってー・・・」

「オレがどうかしたー?てんちょ」

「うんとねぇ、良将ちゃんを・・・って良将ちゃん!?」

首を傾げたまま、良将が頷く。何時の間にか横に来て、自転車を引いていたのだ。まったく気が付かなかったと言うと、

「なんかねェ、すっげェ真剣に考え事してンなぁッて思って驚かそうと思って近寄ったらオレの名前言ってたから、つい声掛けちゃったンだよねェ」

そう言ってから、危ねェよ?と付け加えて笑う。

「丁度良かったわぁ!ねぇ、良将ちゃんって高いとこ好き?これねぇ、すっごく楽しそうじゃなぁいー?」

自転車を引いている良将に、チラシを指差しながら見せる。

「なになにー・・・熱気球搭乗体験・・・え、ナニコレ!めちゃくちゃおもしろそうじゃン!!」

「でしょー!これ五人まで乗れるんですって!でね、菫ちゃんと茜ちゃんも誘ったの」

一瞬、きょとんとしたような顔の後、良将が少しだけ驚いたような顔をする。

「え、菫先輩って珍しッ!行くって言ッたんだ!それに、ええと茜ちゃんって言うとー、赤金?巫女さんの格好してる」

「菫ちゃんは誘えば来るわよぅ?よっぽど嫌じゃない限り、多分。そうそう、茜ちゃんはそれで当たってるわよぅー」

なんとなくつられて、きょとんとしたような顔で返事をして笑う。

「ね、良将ちゃんも行くでしょう?」

「もちろんッ!」

嬉しそうに、ふんわりと笑った蜜琉に、良将が頷いて返事をする。チラシを鞄にしまって、他愛も無い話をしているとカフェの入り口が見えてきた。空はもう夕暮れの色。


多少・・・もとい、かなり強引ではあったが了解を全員に取り付けた、後は当日どうなるかである。


――――――――――――――――――――――――――――


九月某日、晴天。

その日は、穏やかな青空が広がっていた。風も強くなく、熱気球を飛ばすには絶好の日和だった。
会場付近の駅まで二時間ちょっと、そこからバスに揺られて会場まで10分ほどの時間をかけて到着する。

「うーーん、やっと付いたわねぇ!」

蜜琉が会場入り口で伸びをしながら笑う。何時ものポニーテールにサブリナパンツ、赤いぺったんこの靴といったカジュアルな動き易い格好だ。

「は、ええとですね、長時間の電車は疲れるものですから、えぇ、お疲れ様ですよー」

少しぎこちなく喋るのは茜だ。菫が近くに居るからなのか、明後日の方向を見ながら話している。今日は何時も下している髪を高い位置でツインテールにし、白い華奢なリボンで飾っている。洋服も勿論巫女服ではなくて、白を基調として穏やかな色でまとめた可愛らしいワンピースを着ていた。

「赤金は疲れたの?」

同じように体をほぐそうと首をゴキゴキと回している良将が訊ねる。Tシャツの上にシャツを羽織っていて、下は黒のジーンズという格好だ。それに加えて、何時ものバングルと、ピアスをしている。

「いえ、そういう訳じゃないですよ!」

ツインテールをふるふるっと揺らして否定する。

「菫ちゃんはちょっと疲れたかなっ!あんまり電車に揺られる事なんてないからねぇ」

日差しに、一瞬眩しそうに目を顰めた菫が素直にそう告げる。何時もとあまり変わらない格好だが、何よりも特筆すべき箇所は『紙袋』を被っていない事と言えよう。

「まぁまぁ!会場に入って間近で熱気球とか見たら疲れも吹っ飛ぶかもよぅ?それにしても、あたし久しぶりに菫ちゃんが紙袋被ってないとこ見た気がするんだけど、相変らず男前よねー!!」

蜜琉が早く入ろうと言わんばかりにすでに浮いている熱気球を指差しながらそう言い放つ。

「オレ、菫先輩の素顔を長時間見たの初めてかもしンねェ・・・!」

「は、ま、まぁ、確かに、珍しいとは、思うのですよ?えぇ、何時もの紙袋も素敵だと思いますけども、えぇ!」

良将と茜もその意見に同意を示す。

「そんなに珍しいかい?私の素顔って。たいしたもんじゃないと思うけどねっ!」

その言葉に三人が三人顔を見合わせて、菫ちゃんらしいと笑って熱気球の方へ歩き出す。

珍しい四人組の休日はまだ始まったばっかりだ。今日一日きっと楽しくなるわよぅ、と蜜琉は皆に笑った。ペチュニアの花言葉のとおりになればいい、と思いながら。


あなたがいると、心が休まる




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