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サイレン 

駆け抜ける街の片隅で
鳴り止まぬ
君のサイレン
開いてよ




ハロウィン気分も幾分か抜けて、冬の気配が濃厚さを見せる。吐く息は一段と白くなり、街は一足早くクリスマス気分だ。
学園でもそのうち、後一ヶ月もすればその手の話題で溢れる事だろう。でも今は他の話題で持ちきりよねー、新しいGTとか、なんで神戸なのかしら!遠いじゃないのよと考えながら肩掛け鞄を軽く持ち直す。
そして少し遠くに見知ったシルエットの持ち主がいる事に気が付いた。鬼頭・菫だ、紙袋なのと長身なのと、黒いコートで本当に見つけやすいと蜜琉は思う。
丁度いい、GTに誘ってみましょ、そう思いついて声を掛けた。

何時ものように、大きな声で呼び止める。
ほんの少し、ほんの少しだけ何時もより反応が鈍いような気がしたけれど車の音で気が付くのが遅れたのだろうと思いながら駆け寄った。
GTに行こうと誘う蜜琉に、神戸じゃないよねと確認する。
まさか、と笑いながらも行きましょうよと言えば来るんじゃないだろうかと少しだけ思いながらアミーゴに行こうと誘う。

「はいはい、構わないよ!」

蜜琉の親愛なる友人は快くその誘いに乗って、アミーゴへ向かうために駅へと向かう。
街の装飾がクリスマスめいてきたわねと話をする蜜琉に菫も適度に相槌を打ちながら、早すぎる気もするけど毎年の事だと返事を返す。
ふっと会話が途切れたその時、雑貨屋のウィンドウに見えた売れ残りのハロウィンの南瓜に目が留まる。
先日のゴーグルの奥の、良将の見えない瞳を思い出す。菫ちゃんなら、何か知っているだろうか?自分には言えなくても、菫ちゃんになら言うかもしれない。
紙袋を外して鞄にしまおうとする菫に、躊躇いがちに口を開く。

「――そういえば菫ちゃん、最近ちょっと、良将ちゃん変じゃない?」

「……そう?」

「うん。何だか少し、無理してるみたいってゆうか……気のせいかしら」

「さてねぇ、私はその辺りは何とも!」

気にする事じゃないのかもしれない、そう思い込もうとしたけれどやっぱり気分は晴れなくて蜜琉の顔は曇ったままだ。
はっきりとしないなら、いっそ本人に聞いてみるのがいいのだろうか。そう思いながら顔を上げる。

「……まあ、様子見て本人に聞いてみるのが一番よねぇ?」

「そうだね、言わなければ分かんないってマクギタールの友人も言ってたよ!」

本当にその通りだと、蜜琉は笑う。聞くたびに変わる菫の『不思議な友人』を蜜琉は馬鹿にもしなかったし可笑しいとも思わなかった。菫が聞こえると言うのなら、それは聞こえているのだろうと蜜琉は思う。

「相変わらず、菫ちゃんのお友達の調子はいいのかしら!」

「調子は、」

そう言って菫がこめかみに指を当てる。それは頭痛を緩和させる動きに見えた。

「元気だよ、煩い位」

・・・おかしい、と直感的に思ってしまった。何がと問われれば、それは薄皮一枚の話になってしまうけれども。黙った蜜琉に菫が声を掛ける。

「何か?」

「……菫ちゃん、大丈夫?」

何がと返す相手の腕を掴んで軽く揺すりながら、もう一度だけ本当に?と問いかける。

「うん! ……何で?」

「……ううん。そう、ならいいの」

どうして、誰も彼も少し遠くに見えてしまうのだろうか。チリリとした不安で胸が痛む。ゆっくりと、掴んでいた手を離すと菫が少し頭が痛いくらいだと蜜琉に告げる。
何時もポケットに入れている飴をひとつ菫の手に渡して握らせた。菫色の、葡萄の飴だ。
風邪が流行っているから気をつけてと、蜜琉が諭すと玖凪クンもねと返される。

「あたしはちゃんと気をつけてるものー!」

そう言ってうふふと笑う。
そうして菫色の飴玉は黒いコートのポケットに姿を消して、二人は改札口へと飲まれていった。



駆け抜ける街の片隅で
響きなる
君のサイレン
開いてよ
存在証明を鳴らせ
サイレン サイレン
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