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Secret Holiday (前編) 

その日はカフェもお休みで、蜜琉は何時になくおめかしをしていた。
高く結い上げた髪にはお気に入りのコンチョで留められていたし、オフホワイトのAラインコートにバーバリーチェックのセーター、フレアスカートに黒のブーツと中々気合の入った格好だ。
薄く化粧を施して最後に薄い口紅を引いてお気に入りの鞄を持って外に出た。
行き先は駅前で、歩いてもそう大した時間はかからない。
青く澄んだ空を見上げて、白い息を吐きながら歩けばすぐだ。
駅前で、待ち合わせ相手を探してきょろきょろと紅い髪が揺れる。ほどなくして待ち合わせ相手を発見すると駆け寄って声を掛けた。
何時もの学校で見る和風スタイルでも、カフェで見るギャルソンスタイルでもない洋装の忍が笑顔で蜜琉を迎えてくれる。

お互いの格好が新鮮だと笑いながら改札口へと足を進めた。
こういった格好はあまりした事がなく、おかしくはないだろうかと問う忍に笑って蜜琉が答える。

「全然大丈夫よぅー、うふふ、男装の麗人って感じよねぇ!」

「そ、そっか!それならよかった、洋服あまり着ないから変な組み合わせになってないか不安で・・・あれ?男装麗人って女性に使う言葉のような・・・!?」

余りにもナチュラルに蜜琉の唇からこぼれた言葉に忍がコートを正しながら慌てて反論をしかける。

「でも間違ってないとおもうのよぅー」

「み、蜜琉先輩っ!」

うふふと笑う蜜琉に反論しても無駄だとわかったのか少し困ったように笑いながら二人は電車に乗り込んだ。
本日は内緒のお出掛けなのだ、誰にも言ってないしばれてもない。

では、何故この二人が一緒に出掛ける事になったかというと。
発端は、数日前。


それは、カフェでは日常として扱われる光景のひとつだった。
白い子犬のような彼と、オレンジの子犬のような彼がじゃれあう風景。カウンターではそれを見て忍が微笑んでいたし、他の店員も穏やかな笑顔で見守っていた。
蜜琉もそれを見ながら、男の子同士っていいわよねぇじゃれあって楽しそうで!とカウンターの中でテーブルを拭いていた。
女の子はこういう時ちょっぴり損だ、そう考えながらふっと忍を見た。
微笑ましそうにしているけど、少しだけ同じような気分で見ているような気がして、ふむと考える。即座に思いついた楽しい事を提案するためそっと背後に回って声を掛けた。
忍は少し驚いたように蜜琉の方を向いて、オロオロしながらも皿洗いを続ける。
その様子にうふふと笑って本当に聞き取れるかどうかの小声でこう続けた。

「あのね忍ちゃん、今度一緒にお出かけしない?」

「え?」

もちろん、あそこでじゃれてる子犬さんたちには内緒でと付け加えるのも忘れない。
仲良しさんたちになんとなく対抗してみたくなったのと言うと、忍もくすくすと笑って快諾してくれた。
カフェで仲良く話してると、きっとハクヤちゃんが気にするからデスパレードの方で細かい事は決めちゃいましょうとなりとんとん拍子で話が進んで――――

本日となったのだった。

「でもハクヤに内緒って初めてでそわそわするかも」

「いつも一緒にいるものねぇ、仲良しさんで良いと思うわよぅー」

常に一緒にいる二人が珍しく別々にいるのはそわそわするのには充分な理由で、忍はなんとなく落ち着かないようだ。そんな忍の様子がおかしくて、蜜琉が笑いながら答える。
本当に、仲がいいのは見てて微笑ましいくらいなのだから。
目的地の駅に着いて、改札口を抜けながら忍が慌てたように蜜琉に言った。

「え、や、蜜琉先輩だって良将先輩と仲良しじゃないか!」

「あら、忍ちゃんやハクヤちゃんとも仲良しでしょう?」

「それは、うん、そうだったら俺も嬉しいな、じゃなくて!」

「うふふ、でも忍ちゃんと二人でお出かけしてみたかったのようねぇ!それに、良将ちゃんとハクヤちゃんったらあたしたちが依頼に行ったときにお泊まりしたりして仲良しさんなんだものー!」

だからこっそり二人で遊んでもいいわよねと蜜琉が笑う。
そう微笑まれてしまえば、忍に是非はなく頷いて一緒になって笑った。
それから、何かに気付いたような顔になって蜜琉に向かっておどおどとこう切り出した。

「やっぱりエスコートした方が良いかな?格好良くできる自信がないんだけれ、ど」

そう自信なさげにはにかんだ忍に弾けたように笑って、勢いでやっちゃえばいいのよぅ!とけしかけた。
けしかけられた相手も、漸く決心がついたのか諦めたのかおずおずと蜜琉に手を差し伸べて笑った。

「えっと、それじゃあお手をどうぞっ?」

「はーい、今日はお願いねぇー?」

ほんのり冷たくて、でも温かな手を繋いでくすくす笑い合う。
どこに行くかは予め決めておいたし、迷わずにその方向に向かって歩き出した。
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