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Secret Holiday (後編)  

駅からそう遠くもないケーキバイキングの会場に到着する。
入り口からすでに甘い匂いが漂っていて自然と期待も高まっていた。
今日はこの日の為に夕飯を抑えて朝ご飯を抜いてきているのだ、美味しそうなにおいを前に我慢できるはずもない。
繋いでた手を離して、最初に受付をすますと中へと案内される。
四人掛けのテーブルに案内されてコートを脱いで臨戦態勢を整えると、二人はお互い食べたい物を取りに席を立った。

蜜琉も甘い物は大好きだが、それ以上に忍の甘い物好きは突き抜けていた。
カフェで以前にケーキバイキングに行った時のよく食べるなと感心した覚えがあったけれど、今日はお腹を空かした状態なのだ。
まずはこんなものよねと、一皿に色とりどりのスイーツを乗せて戻ってくると、すでに忍が席に付いていた。

「忍ちゃん、すっごいわねぇ・・・それ!」

テーブルの半分以上をスイーツてんこ盛りのお皿が占拠していた。
そして、そのスイーツを食べがらそわそわとした様子で蜜琉が戻ってくるのを待っていたのだ。
「ど、どれも美味しそうだったからつい・・・!あ、でも、本当に美味しいぞ・・・っ?」

普段よりも何倍も嬉しそうで、楽しそうな忍がありとあらゆる種類のケーキを胃に納めていくのを蜜琉は自分の持ってきた物を食べるのも忘れて見入っていた。
どっちかっていうと、和菓子の方が似合う気がするんだけど洋菓子のが好きなのかしらね、と思いながら段々と楽しくなってきて笑ってしまった。
それから、自分もいただきますと食べ始める。
忍ちゃんってすごく美味しそうに甘い物たべるわよねと蜜琉が笑うと、少し気恥ずかしそうに忍が萎縮する。
その様子に、またうふふと笑って遠慮しないでいっぱい食べちゃいましょうと蜜琉が促した。その後、制限時間一杯使って忍が会場のケーキを制覇したのは言うまでもなく。
蜜琉は風味のよい紅茶を飲みながらそれを楽しそうに見ていたのだった。

90分の時間制限を終えて外に出る、満足そうな顔をした二人は次にどこへ行こうかと相談しながら白い息を吐いた。
買い物に行こうと蜜琉が言うと、忍がおずおずと行きたい場所を蜜琉に告げた。

「うん、近くに今とても人気なアクセサリー専門店があるみたいだからそこに行きたいな」

「あ、いいわねぇ!」

聞けば、ジュエリーやシルバーアクセサリーを専門に取り扱う人気店で和風な物から洋風なものまで幅広く、蜜琉好みの物も多数あるという。
こんなのがいい、あんなのがいいと喋りながら歩けばお店まではすぐだった。
蜜琉をエスコートするように扉を開けて促す忍に、にっこりと笑いかけて中へと入る。
中へ入ると、ぱっと見ただけでもセンスの良さそうな物が並んでいるのが見て取れた。

「これは見応えがありそうねぇ、何から見ようか迷っちゃうわよぅ!」

「本当だなっ!えっと、俺はバレッタが欲しいかも・・・っ。そろそろ普段使っている物が色あせてきたし・・・」

「あ、バレッタいいわねぇ!あたしはコサージュでも買おうかしらー?」

そうして、まるで女の子がきゃっきゃとアクセを選ぶように二人でショッピングを楽しんだ。
忍が見つけてくれたコサージュは蜜琉の好みにぴったりと合っていて、即決で購入を決意する。
コサージュに顔を綻ばせながら、忍がこっちを見て微笑んでいるのに気が付いて蜜琉も楽しそうに笑い返した。
それから、お返しにバレッタを選ぼうとまた店内を歩き回る。

「あ!これとかどうー?」

ふっと動きを止めて蜜琉がバレッタのうちひとつを手にとって忍に見せた。
アクリル樹脂でできたバレッタで、薄ピンクの紫苑の花がついた上品な物だった。
和装にも洋装にも、どちらにも合いそうで蜜琉が忍に手渡したその時―――

「こんにちはー、ねえねぇ、ちょっといいかなー?」

そう、軽い感じで二人組みの男性に声を掛けられた。
最初は何かしらと訝しんでいたが、ただのナンパだとわかると蜜琉は営業用スマイルを浮かべて軽く流していく。

「お譲さん綺麗だねー!」

「ほんとほんと、凄くスタイル良いね!モデルでもしてるのかな?」

「そうかしらー?ふふ、でもモデルじゃないわよぅ?」

カフェを始める前はそっちが本業だったけどねぇ、と心の中で呟きながら笑う。
雑誌とかではなく、自分の父親が経営する会社のショー等でのモデルだったから見た事がある者は少数だろう。
そうこうしている内に、お決まりのように遊びに行こうと誘われた。
さて、どうやって煙に巻くべきかしらと考えていると片方の男性が忍にも声を掛け出した。
男の子なんだけどしょうがないわよねぇ、と思いつつ忍にこっそりと耳打ちする。
忍が頷いたのを確認すると、にっこりと微笑んで蜜琉が言う。

「そうねぇ、遊びたいけど、彼氏に怒られるからゴメンなさいねぇ?」

「声をかけてくれたのは嬉しいけど、本当にゴメンな?」

さらりとそう言われてしまえば、ナンパしてきた二人組みも引き下がるしかなく素直に解放してくれた。
彼氏なんていないけど、とこっそり舌を出して忍と笑い合ったのはその数秒後のお話で。

少し薄暗くなってきて、寒さも増した帰り道で今日の事を思い出して蜜琉が笑う。

「やっぱり男装の麗人でもナンパ対象になっちゃうのねぇ!」

「み、蜜琉先輩!真顔でなんてこと言ってるんだ!?蜜琉先輩目当てだったに決まってるじゃないか・・・っ!」

何言ってるのーと蜜琉が赤くなった忍を笑い飛ばす。
確かに片方は自分目当てだったかもしれないけれど、もう片方の男性はどう見ても忍目当てだったのは間違いないのだ。
からかうように、もしハクヤちゃんに知れたら大変よねと蜜琉が笑う。

「蜜琉先輩だって、良将先輩が卒倒すると思う・・・!」

「良将ちゃんの困った顔ってかわいいわよねぇ!」

どうして良将ちゃんが卒倒するのかしらと思いながら蜜琉が首を傾げつつも、困ったような顔を思い出して笑った。
今日のケーキバイキングが如何に楽しくて美味しかったとか、いい買い物ができてよかったとか話ながら歩く。
カフェと忍の家と別れる道で立ち止まり、向き合ってからお互い気をつけてと笑ってそれぞれの帰り道を歩き出す。
不意に蜜琉がくるりと振り返って、きょとんとした風な忍に向かって笑いかける。

「忍ちゃんまた明日ねぇ!」

「うん、蜜琉先輩また明日!」

また明日、と言う事ができる相手がいるのはとても幸せな事だと思いながら手を振って家路を歩く。
空はもうすっかり暗くなって、一番星が輝いていた。



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