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Stay Gold 

悲しいことは きっと
この先にもいっぱいあるわ
My darling Stay Gold
傷つくことも大事だから



体調、よくないのかしら?
少し前からそう思って、少しだけ気にして見ていた。
くるくると、表情を変える白が似合う少年だと蜜琉は思う。
年相応の、まるで弟のような後輩で、友達だ。

微かな違い、僅かな変化。
何時もより笑顔に見えたと思ったら、ほんの少しの憂いた表情。
気をつけて見ていなければきっと気付かない。
去年の六月の自分を見ているようだと少しだけ思う。
一人でどうにかしようって思わないで、気がついて――――



ラストオーダーの時間も終わり店内のお客さんを見送ると、蜜琉がカフェの玄関に『closed』の札を掛ける。
それが何時もの店じまいの合図。

「はーい、みんなお疲れ様ー!片付け終わったら帰って良いわよぅ!」

皆がその声に応えて片付けを済ましていく中、レジの精算をする。
今日も誤差は特に無し、簡単な帳簿にその日の売り上げを記入して閉じる。
お金と手帳を小さな手提げ金庫に入れて顔を上げると、雪白が近付いてくるのが見えた。

「・・・、玖凪」

「なぁに?どうしたのハクヤちゃん」

「あのさ、ちょっと事務所の方で話してーんだけど。・・・今から用事あんならやめとくぜ?」

「事務所に?いいわよぅ、それじゃ、行きましょっか」

用事、この後の予定は特にないし、急いで何かをしなければならない事もない。
本当に珍しく、人目のない場所で話がしたいという雪白を促して事務所に向かう。
途中、良将と目が合ったのでウィンクをして笑って見せた。
一体何の話だろう、と考えながらも事務所の扉を開く。
用件は何かしら、と切り出す前に雪白が動いた。

「・・・、ちょっと、別件、でバイトやることになっちまって。そんでしばらくカフェのシフト休ませてくれねー?」

「あら、構わないけどどれくらいかしらー?」

「わりぃな!んーっと、・・・、・・・二週間だぜ。あ、その間のバイト代は差し引いてくれていーから」

別件でバイト、多分嘘なんだろうと思ったけれど口には出さない。
懸命にその後も言葉を紡ぐ雪白をじっと見つめていた。
何時もの輝きが無い瞳、少しの後ろめたさを必死で隠して。
きっと今までなら気が付かなかった、あの十一月の彼の瞳を見てなければ。
同じ目をしてるの、きっと気が付いてないのね。
ふっと同じくらいの高さにある頭に手を伸ばす。

「どした・・・」

開きかけた唇を閉じて、少し驚いた様子の雪白の頭を黙って撫でる。

―――ねぇ、大丈夫よ。

それから、少し強張ったような頬に指を滑らせて撫でる。

―――だから、そんな顔しないで。

「ねぇ、ハクヤちゃん」

「・・・ん?」

「ちょっとくらい、甘えてもいいのよぅ?」

「・・・、」

だってまだ15じゃない、甘えたって誰も怒らないわ。
それとも、甘え方を知らないの?

「・・・、んだよ、急に」

そのまま声を詰まらせた雪白を撫でたまま、蜜琉が笑う。

「気を使ってるみたいだったから、ね?」

そんな事ないと否定する相手の言葉を受けて、少し茶化して返してみせる。

「ふふ、でも気のせいだったらごめんなさいねぇ?」

少しだけ目を伏せたままで、されるままになっている雪白をどうしたら笑わせる事ができるだろうと考える。
そうして、口の端を持ち上げて。

「えい」

耳をぎゅーっと引っ張った。

「っ!?ふぎゃあぁぁあああああああ!!?」

面白いまでに悲鳴を上げてじたばたする雪白を逃がさないように、耳をくすぐった。
耳が弱いのは良将から聞いていたから試してみたのだが効果覿面とは正にこの事で、子犬が逃げるように雪白が身を翻す。
何するんだよと真っ赤になって威嚇するのを見て、してやったりと蜜琉が笑った。

「うふふ、吃驚した?」

「したに決まってんだろ!俺が耳弱ぇーの知ってるじゃん!!」

「怒っちゃダメよぅー。・・・でも、ちょっと元気出たでしょう?」

さっきより全然いい顔をしていると暗に伝える。

「何かあったら言うのよぅー?あたしじゃなくても誰か他の人でも、ね?」

言えない事は、きっと誰にでもある。
でも、自分じゃない誰かにでもいいから――――

「何もねーから大丈夫だって!まあ、けど・・・サンキュ」

少しだけバツの悪い顔をした雪白に、そう?と笑って答える。
そろそろ帰ると言う相手に手を振って、扉の向こうに姿を消すのを見送った。
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