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白と黒、くるんと入れ替えて。 

あれから20日ちょっと、戦争もあったからその翌日に。
どうせ菫ちゃんも同じ考えだろうとメールを打った。
返事はそんなに期待してなかったけれど(見てない時もあるらしいから!)
どうせなら一緒にって思うものねぇ!

それから蜜琉の携帯が鳴ったのは夕方の事。
返事は簡単で、『構わないよ』という簡単な物だったけれど、それが余計に菫ちゃんらしいわと蜜琉は思う。
そうして、蜜琉は足を菫が働く古書店へと向けた。

菫は何時もの黒のスーツにフード付きのコートという変わらない出で立ちで蜜琉を待っていた。

「お待たせしたかしら!」

「さっき終わったとこだから問題ないよ!」

軽い挨拶をして歩き出す。
道中の会話は、そのコート暑くないの、とかもうすぐ本格的に夏よ?とか。
雨降ってるからそんなに、夏になったらコートは脱ぐけど、とか。
他愛もない話で蜜琉はなんとなく安心する。
何故安心したのかはわからないけれど、変わらない事にだろうか。
大人になってゆく過程で緩やかに変わっていくのだろうけれど、それはまだ少し先の話だ。

屋上につくと、早速とばかりに本業とバイトを入れ替えた。
大した変化は見られない、それはそうだろう。
ただ、何時も指先に集まるはずの蟲たちが集まらない。
白燐光が使えない、なんとなく蜜琉は寂しいという気持ちに襲われる。
綺麗な光だったのにと胸の中で呟いた。
使えない物は使えないのだ、それは仕方のない事だし自分が選んだ事だ。
それなら、新しい能力はどんなものか?好奇心が頭をもたげる。

「そういえば黒燐蟲使いの本業って憑依法?だったかしら」
  
「そうらしいねぇ、でもあれって同意無いと使えないんじゃなかった?」

「確か図書館で見た限りではそうだったわねぇ……。ねぇ菫ちゃん、試してみなぁい?」

お互い丁度いい相手だった。
同じ能力を有し、憑依されても構わないと思える程には親しい友人。
蜜琉は思いついた考えを楽しそうに菫へと向ける。
対する菫も、構わないと蜜琉に告げた。
それからの行動は早く、蜜琉からという事になった。

「ええとそれじゃあ……どうやってやるのかしらねぇ、フィーリングでどうにかなるわよね!」

「フィーリングって随分と便利な……わ」

「……玖凪クン?」

(はーい!って声もでないんだったわねぇ・・・!)

「あ、そうか、聴覚以外使えないんだったっけ!」

(そうそう、って意志の疎通もできないって不便ねぇ)

「と、するとどんな感じ、って聞いても分かんないか」

(言いたいんだけど!すっごく!!!)

「物凄い独り言を呟いてる気分です菫ちゃん!」

(周りから見たら不審者に拍車がかかってるっていうか)

「……『声』よりも反応薄いんだもんねぇ」

(喋れたら名前呼びまくっちゃうのにねぇ、うるさいだけかしら?)

「ちょっと歩いてみたりした方がいいのかな!」

(歩いても歩いてる感覚わかんないんだものねぇこれ)

「――いるって感じしないんだけど、本当に出来てるのかね!」

(出来てるんだけど、っていうか逆の立場になったらきっとわかると思うわよぅ!!)

「………………」

(・・・)

「……そろそろ解除して貰ってもいいかなぁ」

(そうするわ!)

お互い、音を上げるのは早かった。
解除、と念じたら驚くほど簡単に憑依は解けた、今まで聞こえなかった音、見えなかった景色、何も感じなかった嗅覚と触覚の全てが一気に戻る。
その感覚の違いに少しくらりとして目を閉じて眉根を寄せた。

「……あんまり楽しいもんじゃないわねぇこれ……!」

素直な感想を口にして、菫ちゃんもやってみればわかるわよと蜜琉が指をひらひらとさせて促す。
どうやったらできるのかなと言う問いに、やってみれば出来るという実に蜜琉らしい答えを返したその瞬間に、菫の姿が消えた。

「菫ちゃん?」

姿が消えた相手に問いかける。

「あ、さっきと同じだから何言っても答えられないのよねぇ」

先ほどの感覚を思い出して、返事のできない相手に喋る。

「なんかこう、一言で言うともどかしいっていうか」

回りに人がいなくてよかったなぁと思いつつ。

「つまんないっていうか!って感じじゃなぁい?」

自分の意思でなく、何も出来ないのは。

「これ、あれかしら?GT行ったりすると音だけでなにがなにやらわかんなくって恐怖心だけ煽るものなのかしらねぇ?」

目を閉じて、ホラーノベルとかを聞く気分なのだろうか。

「あ、そろそろ解除する?」

そう言うのとほぼ同時に菫の姿が現れる。

「……気持ち悪っ……!」

菫の第一声に蜜琉が同意するような、苦しげな笑みを浮かべた。
お互い、憑依能力への感想を言い合いながら階段へのノブを回す。

「後もう一回はこなくっちゃなのよねぇ」

「白燐蟲とフリスペを入れ替えないとねっ!」

それじゃ、後もう一回一緒にねと笑って屋上を後にした。
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