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【6/1 夕】誰かの嘘と自己満足 

どうして、夢の中の女の子は泣いているのだろう?

あたしは笑ってるのに。


どうして、夢の中の女の子は立ち竦んで動けないのだろう?


あたしは立って歩いてるのに。





「ん…」


チャイムの音で目が覚める。
目をパチパチと瞬いて起き上がる。


あぁ、そっか。
保健室で寝てたんだっけ。


腕時計に目をやるともう夕方、丁度下校時刻だ。
ベッドから降りて身を整えて、僅かに濡れる目元を拭ってから引かれた白いカーテンを開ける。


「おはようございます、玖凪先輩」


木乃香がこちらに視線を向けている、約束を忘れるなと言っているかのように。


「おはよう、すっかり寝ちゃったわねぇ」

「今日はどうするおつもりですか?」

暫しの沈黙、先に口を開いたのは蜜琉だ。


「出かけるなら、誰か誘うわ。だから、木乃香ちゃんも」


誰にも言うなという目線を投げる。

逡巡した後、不承不承と言った感じで頷くのを見届けるとふわっと笑ってまたねと声を掛けて保健室を後にする。



うっすらと暮れていく中、誰がいいだろうと考える。


詮索せず、何も言わず、あたしに余裕がない今でも大丈夫な、そんな人。
そう思いながら顔を上げると。


・・・いるじゃない、今、目の前に。


紙袋被った人が。

咄嗟にコートを掴んで、


「菫ちゃん、今夜暇?」


陳腐な誘い文句にしか聞こえないセリフに、鬼頭・菫が振り向く。



驚いた風でもなく、問いかけに

「暇だけど?」

と、期待通りの答えが返ってくる。


「遊びに行かない?」

「どこにかな?」

「GT、今から準備したりしてだと夜になるけど」

「構わないよ! ……けど、最近夜に行くの流行ってるの?」


質問の意味がわかんなかったから、曖昧に笑って携帯の番号だけ交換して家に戻って荷物を纏めて。

カフェに荷物を放り込んで営業時間いっぱい働いて閉店させて皆を見送ってから電話をして。


現地集合。



「じゃあ、あたし先頭行くけどいいかしら?」

「菫ちゃんは構わないよ!玖凪クンの好きにすればいいさっ!」


なんて気が楽、何も聞かれない、何も気にされない。

あぁ、だからあたしは鬼頭・菫という人物が 永遠に恋愛対象にならずに好きなのだと確信する。


なんて素敵な友人、今のあたしを見たって反応が変わらない素敵な友人。


振り返らず、躊躇せず、向かってくるゴーストを打ちのめす。
顔は見せない、きっと酷い顔をしているに違いないから。


笑っているのか、鬼のような形相なのかはわからないけど、きっと酷い顔。


それでも淡々と後ろを守りながらきっちり付いてくる菫に感謝しつつ夜のゴーストタウンを駆け抜ける。

ひとしきり駆け抜けて、全てが片付いた所で蜜琉が後ろを振り向いて菫に向かって微笑む。

「ありがと、助かっちゃった」

「いやいや!菫ちゃんでよければね!まぁ、玖凪クンもあんまり無理しない程度にねっ!」


笑顔のままトンっと手を菫の胸に置いて距離をあけて俯いて。


「・・・大丈夫だから、また手伝ってくれる?」


「いいよ」

短く答える菫の表情は見えないけれど、その答えに笑顔で顔をあげる。

すっと離れてお互い帰路に着く。


帰り際、次もよろしくねって微笑んだら


三日に一回くらいにしてくれる?って言われちゃったけど。


それくらいならなんとかなる、それだったらきっと大丈夫。

一人で 独りで GTに行こうとする衝動をきっと抑えられる。

だってあたしはちゃんと笑えてるもの。
鏡の中のあたしは何時もどおりの笑顔だもの。


誰にも気が付かせない。

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